イギリスの小説に現れる家

映画と本の紹介
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十分な生活費を稼ぐより、なぜか地元文学の編纂に生涯を費やした祖父の影響なのか、家に本だけはたくさんあった。子供時代のいろんな本が詰まった本棚の中でも、ふり返ればイギリスの小説にはまるで家が主人公のような話が多かった。

 

イギリスでは田舎の瀟洒な家に、固有の名前がついていることが珍しくない。

(絵のような牧歌的な村にある、私の親戚の家にも素朴な名前がついている。でも番地がないのでGoogle マップで探せない)

そこに住む人が家を愛するほどに、家は彼らの時間を超えた家の過去へと誘う。

イギリス人にとって家は、時を超えて生き続ける。

この記事では、子供時代に本棚にあった本、イギリスで学んだり読んだりした、家が主人公のような物語を紹介する。

 

 

ダフネ・デュ・ モーリア「レベッカ」


レベッカ

「レベッカ」は、「マンダレー」と呼ばれるお屋敷を舞台にした心理サスペンスだ。

裕福な女主人の海外旅行に付きそって働いていた貧しいヒロインは旅先で、孤独の影を落とすお金持ちの男性と出会う。

ヒロインは求婚され、イギリスに戻ってマンダレーと彼が呼ぶ、大きな敷地の壮麗な屋敷に住むことになる。

ところがマンダレーには先妻・レベッカの過去が、そこら中に宿っていた。

 

ヒロインは、マンダレーでレベッカを今も崇拝する召使や、レベッカの従兄弟から伝え聞く、怪しい噂に、極限まで追い詰められていく。

 

小説をもとにした映画では、マンダレーは破壊的なほど美しく、海に面した崖やコテージなどの情景とともに、ヒロインをレベッカの死の真相へと導いていく。

 

 

フィリッパ・ピアス「トムは真夜中の庭で」


トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

トムは弟がはしかにかかったので、親戚の叔父叔母の家に預けられる。この家にネジで固定された古い大時計が、午前13時というありえない時刻を打つと、トムはビクトリア時代の衣装を着た少女ハティに遭遇する。

この古い家の古い時計が、トムを秘密の庭へ、過去の時間へと招く。

トムは真夜中の庭でいつでも子供で寝間着姿なのに、過去の時間を生きるハティはトムを置いてきぼりにして、1人だけどんどん大人の女になっていく。

 

 

ヴァージニア・ウルフ「オーランド」


オーランドー (ちくま文庫)

この小説は、オーランドと言う1人物の伝記本の体裁を取っていながら、中身は男性として生まれ、何百年もの時を経て女性に変化するオーランドの壮大なファンタジー。

伝記の体裁をとった装丁を見ただけで、そのだまし絵のような仕掛けにワクワクするのは私だけ?

しかも難解な小説が多いウルフの作品の中で、まるで冗談のような文体で軽くて読みやすい。

オーランドは貴族として生まれ、365の部屋数を持ち、お気に入りの木や羊歯、広大な敷地に、馬や牛、羊、犬や鳥を抱える館に生まれ育つ。

敷地から見える首都ロンドンの眺め、何百年もの間に館を訪れた世界の王族、館で生き死んだ祖先ら、館を支える召使いたちなど、館はイギリス階級社会の滑稽なパノラマであり、優雅で緻密で長大な物語世界だ。

 

 

 

ペイトン「フランバーズ屋敷のひとびと」


フランバーズ屋敷の人びと〈1〉愛の旅だち (岩波少年文庫)

子供の時に読んだこの物語では、クリスチナと言う私の当時の年齢と同じ位のイギリスの少女が父母を事故で亡くし、親戚が住むフランバーズ屋敷に引き取られる。この屋敷の主とその長男にとって、乗馬が暮らしの中心である。

乗馬へと向かい、戻ってくる大きなエントランスホールで、乗馬を介し彼らは歓喜、怒りや罵り、悲しみの心情をぶつけ合う。

 

そのホールとつながっていると思われる食堂では、クリスチナは使用人たちが運ぶ食事を食べ、叔父である家の主人との争い、使用人との複雑な関係を通して後半の物語へと展開する。

家は、乗馬に明け暮れる古い世界の象徴として描かれている。

孤児のクリスチナはこの家に来てすぐ、馬との生活や馬との愛情に心の拠り所を見出す。一方乗馬を強いる古い考えの父と兄に傷つき、1人で密かに科学的な新しい分野へ挑戦しようとして苦悩する弟のウィルに、クリスチナは友情を超えて惹かれていく。

 

 

カズオ・イシグロ「日の名残」


日の名残り (ハヤカワepi文庫)

「日の名残」は、田舎の屋敷「ダーリントンホール」を管理する執事が主人公。

第二次世界大戦前、執事は自分が仕える家の主人と家を訪れる人々が、刻々と変わる世界の国際政治を真剣に議論するのを見聞きする。

執事は、家の主人も家も、世界の動向に影響力を持っていると信じている。

そんな家の執事という立場に愚直にこだわるあまり、執事は主人の行いの誤りも認めず、自身の女中頭への恋も失う。

しかし彼がたとえ認めようとしなくてもその家や主人の栄光は大英帝国の歴史同様、まるで日が傾いて行くように落ちぶれて行く。

 

 

 

ルーマー・ゴッデン「人形の家」


人形の家 岩波ものがたり絵本 9

話よりも表紙の裏の全部屋の絵が好きで何度見ても飽きなかった。

調べたらイギリスの作家(Rumer Godden)による物語だった。(イプセンによる同名の戯曲とは無関係)どうりでイギリスの家に似ている。

でもこの精緻な家の内部の絵は、「ぐるんぱの幼稚園」などを描いた日本人男性のイラストレーター堀内誠一によるものであることに今更気づいて驚く。

 

 

 

E・M・フォスター「ハワーズ・エンド」


ハワーズ・エンド (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-7)

「ハワーズ・エンド」という名の田舎の家で、家の主であったルースが死ぬ。

ルースは生前「ハワーズ・エンド」や家を囲む豊穣な庭の自然を愛した。

彼女は遺言で、家を即物的な家族に残さず、自分と感情を共有できた友人マーガレットに残す。

家族はルースの遺言を密かに焼却して財産としての家を守ろうとするが、結局はマーガレットがこの家の主人ヘンリーに愛されたことで、家はルース同様、暖かな共感力を持つマーガレットやその家族に受け継がれ、結果としてルースの遺志が実現してしまう。

 

 

*過去に読んで手元にない本がほとんどなので、各表紙画像はアマゾンからお借りしています。

 

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