イギリス、パブって日本語のキーワードで検索すると、
イギリスのパブは労働者階級ともっとお金持ちの階級と入り口が分かれてたって。
そういう説が現れる。
ツレ(イギリス出身)に聞いてみたところ、
そんな話は聞いたこともないそうだ。
もし今なくても、昔あったのか?
お金持ちと貧乏な人が同じエリアに住むなんて、
階級がパキッと分かれていた昔のイギリスではありえなかった。
今でもお金持ちと貧乏人は別の世界で生きていて、
生まれてから死ぬまで、あんまり会う機会はないのではという気すらする。
(日本よりはるかに限られる)
昔、パブは今以上にどんな町角にもあったはず。
違う世界に生きている両者、わざわざ同じパブに行くのだろうか。
イギリスで違う階級に生まれたら?
全く別の場所に暮らす人たちがあえて同じパブに行くと言う事は、
現在ですらあまりないのでは、、というのが感想。
じゃあ、お互いが交わる場所はあったのか?
あるとすると、もともと貧乏だけど、今はちょっとお金がある、
つまり中間の経済環境にいる者同士だったら、交わる機会はあると思う。
例えば大学、職場やボランティア活動などで。
階級の違いといっても、程度によって交わる機会も頻度も変わると思う。
一体この説はどこから出てきたのか?
この説の根拠となると、英語で検索しても何も出てこない。
とは言え、私が知る限り、ほとんどのパブは2つ入り口がある。
例えば我が家の近くのやっぱり100年以上前のパブは、結婚式、記念パーティー、葬儀場?、、などとして使われる大部屋があり、会合場所の大きい部屋専用の入り口がある。
田舎の親戚が行くパブでは、食事をする目的の人用の入り口があり、
バーだけ利用する小さな部屋にも別の入り口がある。
我が家の近所の他の古いパブもみんな、奥の部屋の入り口が別にある。
一つの、ビール醸造会社の運営していた(コロナ後閉鎖されて、今も私たちは再開を待っている好きなパブ)パブ、入り口だけじゃなく、カウンターも二つあったりする。
ツレに聞いたら、明確な答えが返ってきた。
なぜ入り口は2つに分かれていたの?
「なぜ入り口は2つに分かれていたの?」
とツレに聞くと、男と女で分かれていたそうだ。
「女には話せない内容を男同士で話してたの?」
苦笑いして答えにくそうだから、ちょっと当たってる?
「いや好みが違うんだよ。男たちは立ってバーでビールを飲み、女たちはシャンデリアとか、ふかふかのソファーとか、そういうところで話をしたがるだろう?」
ツレの話をまとめると、パブで入り口が2つ分かれていたのは、
労働者階級と中産階級でじゃなくて、男女で部屋が分かれていたから。
けど、多くは厳格に分かれていたわけじゃなく
大体って感じで男性の多くいるバーに女性が混じったりその逆もアリだった。
今は部屋の仕切りがなくなって、入り口2つもほぼ無意味化している。
英語で(階級とパブ、入り口について)web検索すると
Wikipediaの「pub」の記事の英語版では入り口の記述ではないが、建築として中がバー(タップバー)とサロン(サルーンバー)に分かれているのが、時代によって機能、性別、階級によるものでもあったと書かれている。
が、階級による件では詳細な記述はない。
他のウェブサイト(下記の参考文献参照)でも、「性別によって分けられていた」と言う人が多く、それに比べ階級についての言及は限られた。
ただ、昔はカウンターだけの部屋(タップバー)よりソファやふかふかの絨毯がある大きな部屋(サルーンバー)の方が、飲み物の価格も高かったと複数の人が書いている。
そして、(サルーンバー)で飲んでいた客が、(タップバー)で飲んでいた修繕工に工事を依頼して費用の話をしに行くといった光景が見られたそうだ。
非常に階級の高い人が、自分から修繕工に工事の話をしに行く事は想像しにくく、
想像するにこの2人のように、少しだけ懐具合や階級の違う者が、同じパブで別の部屋を利用したのではないか。
パブを語るのは難しい
Wikipediaの「pub」 日本語記事は、英語記事とは相当違うことが書いてあり、その参考文献は日本人の文献になっている。
日本人の文献の一つが「パブに入り口二つあるのが階級によるものである」とまるでそれだけが背景であるかのように書いて、日本で通説になった可能性も否定できない。
(残念ながら私が知る限り、日本人のイギリス本については無理な一般化や不正確な記述に溢れている。これを自分に対する戒めにもしたい)
なんにせよ、ツレとこの説について長時間話した結論としては、パブは各時代で変遷し、多様で一般化するのが難しいと言うこと。
たとえパブの入り口という建築の形式だけに限っても、英語文献で複数の考察や見解が散見するので、たった一つの理論にまとめることは難しい。
イギリス人の間でも、過去には書籍など出版物で、今ではネットで、盛んなパブ論議が日々繰り広げられ「Pubology」=「パブ学」と言う語があるほどなのだ。
パブを語るのは難しい。
その理由は、パブがイギリス人の生活、歴史、文化、美意識、大げさにいえば人生そのものだから。
参考文献
Pubs and class Inspired by an interesting post at Tandleman Towers (which wa boakandbailey.com
Pub – Wikipedia en.wikipedia.org
What is Pubology? | Pubology www.pubology.com
写真のパブに住所、歴史など
Bridge Hotel
Tynnemouth Lodge Hotel
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