イギリスの住宅はいつ頃建てられたの?

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過去の痕跡をあっちこっちに残したような古い家に心惹かれる。そんな家では夜中に「今」の時代が寝静まると、そこかしこに「過去」が、当時住んでた人の息遣いみたいなものが、聞こえてくるような気がする。日本の田舎の古民家、モロッコのリヤド(昔の屋敷を改装した宿屋)、イギリスのごくありふれた古い家でも。
下のグラフはイギリスの家の築年数をグラフ化したものですが、約2/3のが築年数50年以上で、一番左の真っ赤なグラフにある「1900年以前築」が一番多い。つまりですね、
築120年以上が一番多くて、イギリスじゃ家は平均して古いのだ。

一番左の」赤いグラフが築120年以上の1900年以前の建築で、この築年がイギリスで最も多い。

イギリスの「新しい」方の住宅は築50年
「家を買うなら新築」って、あなたもやっぱりそう思いますよねえ?
イギリスじゃ、50年前の家でも「新しい」範疇ですよ。

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最近内見に訪れた家は、夫はおそらく築50年ほどだと推定する。
「僕が子供のころ住んでいた家にそっくり」だそうで、家の作りはその年代によって特徴があるらしい。
若い女性が1人で住んでいたけれど、「好きに見てください」と言って庭に置いた椅子に座って犬をあやしていた。
日本風に言えば3LDKということになるその家は、おそらく80平米以上はあり、居間は広々としていた。オーナーの女性によると「ここはカウンシルハウス(公的資金で運営する住宅公団のようなもの)だったの。それを叔母がずっと前に買い取ったの」だそう。
室内はニュアンスのあるペンキでレトロ風に塗られていた。夫は「まだらな塗装だったよね、あの子自分で塗ったのか」と素人呼ばわりだったけど。
公的資金によって建てられたカウンシルハウスは、労働者階級の住宅
夫によるとイギリスの相当な割合の家はもともとカウンシルハウスだったそう。それをサッチャー政権時生まれた買取制度により、長年賃貸で住んでいた家を安く買い取ることが可能になり、今では公団的な(カウンシルハウスの)賃貸がグッと減り、「元カウンシルハウス」が一般の物件として売られていることが多いのだそう。
夫の実家も同様にわずか数百万円相当で15年以上賃貸していた同様な家を買い取ることができたそうだ。けれど内見した家は日本の家と比較し、家も庭も若干広め程度で、外観がレンガというくらいで特別な違いは無い。ただ、日本の2×4風の作りの家なので「屋根裏も大きいの。寝室に改築も可能よ」とオーナーの女性は言っていた。
ヨーロッパと同じく、テラスドハウスが多い
イギリスの家の多くは長屋みたいな左右がくっついた家が並んでいる連棟式住宅(テラスドハウス)。冬、まるで人間同士が風が強い時に腕を組んでくっついて寒さをしのいでいる、そんな感じを思い出す。
特に「なんとかクレッセント(三日月形状)」という名前のゆるやかにカーブした通りに長い長いテラスドハウスがあったりする。あれってちょっと要塞っぽいけれど、きっと左右は塞がれているテラスドハウスには、外部からの侵入面を減らす安全性(侵入できるのが前後しかない)、寒い外気や風をブロックしやすい暖房効率(左右の家からくる暖気の恩恵にも預かれる)、家の強度(左右で支えられているから強い)、コスト効率(共同住宅として建築することでコストが下がる)といった、いろんな機能があるんだと思う。
新築の家の方が人気がなくて比較的安い
もちろん、場所によって価格が決まるのは日本と同じ。
ですが、(以下一般論として)何より日本と違うのは新築の方が人気がなくて比較的安いってこと。なぜ新築が安いかというと大英帝国時代の名残のある家と比べると効率優先で、すべてにおいて節約した作りから。
そう、大英帝国時代に世界中から集めた富で石造りの家を作って、地震がないからそういう家がほぼ残っているとか、国に余裕があったので普通の人の家も当時の家は良いとか、歴史や地理的条件がありますね!さらにいえばイギリスだけでなく欧州が観光客を集めているのも、この昔の栄光とも言える古い石造りの建物群のせいなので。(写真の家は今はホテルとして使用されている築約400年のお屋敷。テラスハウスではなく、400年前船舶会社のオーナーが建設、その息子は政治家)
結局、今のイギリスは当時と比べて経済的には衰退し普通の先進国になったということですね。
100年かそれ以上前の築年数の労働者階級の家
今私たちが借りている家なんかは、(左の写真)100年かそれ以上前の築年数と思われる。なぜなら家が古ければ古いほど暖炉だけでなく壁や天井や入り口などに、凝った装飾のある部分がそのまま残されていることもあるので、その装飾の様子から推測されるのだ。(たとえば最初に挙げた築50年?の家にはこういった装飾はない)
一番上のメイン写真は「漁師のコテージ」と呼ばれる昔漁師の住まいだったと思われる海辺のテラスドハウスで、入り口がそのまま道路の前になっているが、今いる家も同様に庭がなくて道路にそのまま玄関がある。街の中心から徒歩エリアだとかなりの家の

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「庭」とも言えないほど小さなスペースにコンクリートで敷き詰められていて、そこに鉢植えなんかが置いてあることが多い。「こ、これがイギリス人が誇る、ガーデニングの庭?作業場?」というくらい狭い庭が「バックヤード」と呼ばれている。
100年かそれ以上前の築年数のもっと裕福な人の住宅
築100年以上くらいの家なら、各部屋が、それより新しい家よりはるかに大きいけれど、多分それも建築当時の所有者がお金持ちか、そうじゃないかで作りが多分ぜんぜん違う。3〜4階建てくらいだったりするものだから部屋が15個ぐらいも普通。
ロックダウンの時住んでいた賃貸住宅(写真の多分築140年くらいの家)はおそらくどちらかと言えばお金持ちが住んでいた家で、もともと2階建てプラス屋根裏部屋の計3階を、各階2LDK〜3LDKずつに分けて改築して貸しており、こういう賃貸住宅は多分一般的だ。(各住戸が1階だけなのでこれをイギリスではフラットと呼んでいる)
もちろん建築当初のまま、各階で分けたりせず、そのまま住んでいる人世帯もあると思う。
ただ庭に関しては、これぞイングリッシュガーデン!という庭(写真のような)は郊外に行ってやっとお目にかかれます。
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