バス停で「5時のバスもう行っちゃった?」
と聞いたら女の子が「まだよ」と答えた。
真っ青な瞳にハッとした。
12〜13歳の女の子の顔は丸く平べったく、ソバカスがいっぱい。
赤いカールした髪を後ろで結わえている。
この女の子と母親と乳母車の赤ん坊は、
もう1組の同じような年齢の家族と友人らしい。
もう1人の母親の子供は女の子と同じくらいの年齢の男の子だ。
20分おき位に来るはずのバスは全く来ない。
私の隣のアフリカ系の女性に聞いてみる。
「バス来るでしょうか」
「もうすぐ来るわ。すぐそこまで来てる」
良かった、と思った後、でもこの人がただ楽観的なだけかもしれないと思う。
「なぜそう思うの」
彼女はなぜか曖昧に口をつぐむ。
女の子は細くて、
男の子のような身体に、
胸がほんの少しふっくらしている。
「私は赤毛」と言う歌を歌っている。
私と目が合うと「ハーイ!」と挨拶する。
「なんでバス来ないのかな」
「今地下鉄が工事して止まってるでしょ。それでバスの運転手が忙しくて、この路線のバスの運転手が足りないのよ」
イギリスでは、人手不足で交通機関はじめとする公共機関が運転営業を停止すると言う事は、普通だ。
この女の子が歳の割にしっかり説明したのに私はちょっと感心した。
また人が来てバス停の人々に加わると女の子は
「来るはずだったバスが4本も来てないの」
と説明している。
1時間ぐらい経って、バスを待つ人は
15人ぐらいになっていたが、誰1人帰ろうとせず、皆辛抱強くバスを待っている。
女の子はどこからかテニスボールを出して自分の胸に入れ突き出し、男の子に見せる。
男の子は当惑顔で視線を逸らす。
女の子の家族ともう1つの家族が、大声で歌を歌い始める。
バスが次々に来て前を通り過ぎていき、
その度、皆のため息が漏れる。
「私たちのバスはどこー!!」
と陽気な叫び声まで聞こえて来る。
皆んながソワソワし始める。
ささやき声の内容までは聞き取れないのだけど、
もしかしてバスが来るのかもしれない、
と思っていたら、
ついに赤い二階建てのバスが止まってドアが開いた。
母親と乳母車は一階の前の方に、
赤毛の女の子や同い年位の男の子たちは2階に、
階段を上っていく。
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