コロナについての見解が、全てはっきりしている
イギリスは世界で感染者数と死者数が上位5位前後となっており、イギリス国内でも「イギリスはコロナ対策に失敗した」という見方が一般的で、私もそう思う。
にも関わらず(私見だが)イギリスでは日本のようにコロナに関して、あーでもないこーでもないと言う議論は、ゼロではないけど、ほとんどない。例えば、
●憂慮すべき病気かまたは風邪なのか?
●PCR検査を広く受けるべきか?
●ワクチンを受けるべきかどうか?
全て見解がほぼ確定している。
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●コロナは風邪ではないし、無症状の人が過半数いるけれども、感染性や感染後の医療機関への負担が他の病気よりもよほど高いので憂慮すべき病気である。
●検査は誰でもが受ける必要はないが、医療関係者や高齢者や持病のある人は症状の有無に関係なく広く受けるべきだ。
●ワクチンはリスクよりベネフィットが高く受けるべき。
といった具合。
その理由について、イギリスで生まれ育った人(ツレ)の意見を聞いてみた。
理由1)政府がコロナについての方向性を、国民に示している
ツレは政府の、特に初動での水際対策の遅れに今でも怒っている。
ただツレも「コロナについてのイギリス国内の見解」についてはだいたい一致していると思う、と言う。
なぜそうなのかと聞くと、それは「政府がコロナ対策の方向性を国民に示しているから」だそう。
去年イギリスの第一波は春で、ロックダウン後感染者数が劇的に減った夏には、明るい希望があった。
第三波は暗い冬で、変異種の脅威に晒されるイギリスは、暗いトンネルの出口を必死に探しているように見えた。
ワクチンも南ア変異種には効果が不安で、広範な検査で南ア種陽性者の洗い出しに躍起となっていた。
そんな中毎日のように首相か担当から、政府が何を何のためにやっているか、何を目指していて、今どの段階なのかの報告がある。
ワクチンの効果実験データと検証報告があり、ワクチンは暗いトンネルを抜ける光と位置付けられた。
最近では、高齢者や持病のある人といったコロナで重症化が予想されるほとんどの人はすでに1回目のワクチン摂取済みとなり「まだそれで完全な終わりと言うわけではない」という前提つきながら「7月中に国民全員1回目摂取を目指す」と言う政府発表に、多くのイギリス国民は希望を感じている。
コラム1)イギリスのコロナ情報
現状や施策、方針、その根拠、進捗を政府がほぼ毎日発表して、マスコミはそれを検証する、という情報の流れがあると思う。
例1、ロックダウンすべきかについて
今のロックダウンは3回目だが、今回もこれまで同様、始まって以来1ヶ月程度で、コロナ新規患者は約1/4程度になり、今も劇的に減少中だ。
毎日の政府発表で、このことを知らない人はほとんどいないと思う。なのでロックダウンの範囲や時期には議論があるが「効果ない」などという意見は聞かれない。
例2、ワクチン接種について
国民は毎日、今日何人が受け、いつまでに何人受ける予定か、会見で知らされる。現状イギリスの高齢者から始まって1日40万人前後が受け、すでに約4人に1人が完了している。
政府からの具体的な数や施策が毎日報告され、最低限必要な情報の送り手が政府に絞られているから混乱が生じにくいと思う。
理由2)イギリスでは国民は戦時中のように一丸となることを求められた
イギリス政府は「国民を一つにまとめようとしている」ことも、情報の分断がされていない理由の1つではないかとツレは言う。
コロナ勃発直後から政府が協力し「医療機関を守る」を合言葉にして、国中で医療機関に向けて毎週木曜日の夜、拍手をするイベントを主導した。
さらにSNSの企画者の活動や教育機関と連携して、子供が描いた虹の絵と医療機関やエッセンシャルワーカー*への「ありがとう」の言葉を窓に貼る活動に関わったり、女王がその時々で国民の協力を求める、など戦時中のような「国民一丸」の雰囲気を醸し出していた。
これらは、イギリスの医療制度を国が一括管理していることが背景にある。
「国民一丸」でおり医療制度の崩壊を防ぐと言う目的を掲げ、医療機関やエッセンシャルワーカーへの感謝を政府や時にはエリザベス女王が、折に触れて発信し続けている。
またコロナ禍勃発以来何千何百もの感染者本人や家族が名前顔出しで取材に応じほぼ毎日放映されている。
そのため、医療従事者や患者を差別する声や事件もゼロではないにしてもほとんど聞かないし、日本と比べ、とても厳格なロックダウンですら、比較的冷静に受け止められてきた。
*イギリスではキーワーカーと呼ばれる。食料品など生活に必須の物資やサービスの供給に携わる労働者のこと。
コラム2)英国民がコロナ禍で分断することなく、互いの思いやりでまとまることに貢献したおじいちゃん
2月2日「私たちは今、戦争をしているようなものです」と言ってコロナ禍のイギリスを鼓舞し、コロナ募金で47億円集めた、100歳のおじいちゃんキャプテン・トムがコロナで亡くなった。
このおじいちゃんは「医師と看護師は全員、最前線にいて、私たちは後ろにいる。私たちは彼らがもっと良い仕事ができるように必要なものを補給してやらなければならない」と言った。
おじいちゃんのコロナ募金はたちまちメディアと国民の注目を集め、しかも英国民がコロナ禍で分断することなく、互いの思いやりでまとまることに貢献した。
理由3)イギリスでは政治に対する期待値が高い
ツレは「イギリスでは国民の政府に対する期待値が高くて、政府が明確な方向性を示さないといけない」とも言う。
政府は、PCR検査済人数(去年)ワクチン接種済み人数(今年)に関して「今月の目標は○人で、これだけ達成した」又は「達成できませんでした。申し訳ありませんでした」と謝る。
そして掲げた目標を達成できないと、怖い顔した各メディアのジャーナリストに「できなかった理由をもっと具体的に述べろ」だの「なぜあなたはわからないのか?」など人格否定的なことまで言われて、責め立てられる。
その図は、会社員に例えると部下=政府で、上司=国民。
上司である国民が、部下である政府へ期待し要求するのは当然のことなのだろう。
コラム3)日本では食べ物に対する期待値の方が、政府に対するよりも高い?
「イギリスの食べ物がまずい」と言われる理由は、日本と比べて文化的においしさへの期待値が低いのでまずい食べ物も平気な人が多いからだと思う。
日本人の方が食べ物に対する期待値が高くて、そういった水準に達しないものは淘汰されてしまう。
政治に関しては逆に日本人は期待というか、高い水準を求めるという感覚があまりないと思う。
なので、なかなか「国民に方向性を示す」リーダーシップだとか情報の透明性も生まれないのではないか?
世襲政治家の安倍ちゃんは「ルイ16世」とかいうあだ名を頂戴した。ガースー首相は「国民のために働く」というキャッチコピーで交代したが、日本では江戸時代から、お上が政府で、お上には逆らわないのが普通の感覚だから、政府の情報に方向性や具体性が不足しても、マスコミも、国民もそれを追及しない。
まとめ:イギリスと日本の違い
イギリスでは、イギリスの医療制度を国が一括管理していることが背景にあり、医療制度の崩壊を防ぐため、コロナ情報は政府が一貫して具体性のある情報を発信し続け、医療機関への感謝の表明も政府が主導している。
日本ではやっと医療機関関係者のワクチン接種が始まったばかり。一般の人への計画などもいまだに発表すらされていない。
このように日本では情報も、政府の方針も明確ではないため、国民は不安になって、「ワイドショー」的なさまざまな憶測に流されたり、「本当はこうなのではないか?」と言った陰謀論めいた説を信じるなど混乱が生じている、、、という印象を私は受ける。
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