イギリスでの家の購入、私たちはいまだに物件を買えてなく、本当に買えるのか確信がないままだ。半年近くかけて何十件も内見し、大げんかの果てに物件を決め、買い付けを入れ、イギリス流の手順を踏んで家屋調査も済み、弁護士も手配した。それが2ヶ月以上前だ。日本よりもずっと複雑で時間がかかるとは聞いていたけれど、、、、
なので少しでも状況を理解したいと思い、イギリスに家を買った日本人の本をアマゾンで見つけた。
「突撃!ロンドンに家を買う」の井形慶子さんの場合
井形慶子著「突撃!ロンドンに家を買う」では、イギリス関連の雑誌を出版している著者が、イギリスに拠点を持ちたいと思い、ロンドンの高級住宅地である、私も大好きなエリア・ハムステッドで実際に物件を購入するまで奮闘する。
比較すれば私は夫がイギリス人で英語に関しては問題ないとは言え、私も夫もイギリスでの不動産購入は完全に初めてで、何の知識もなかった。
いっぽう、井形さんは職場の3人の部下に日本でも、イギリスでも助けられ、ロンドンで日本人向け不動産会社を営む社長が長年友人関係で、その人に物件を紹介、検討してもらうなど、私と比べると圧倒的に支援者に恵まれている。
井形さんは、ロンドンの不動産会社で勧められ、1つの物件だけでなく、滑り止めとして2番手も含め2物件に買い付けを入れた。
イギリスの不動産購入って、どんだけ大変なのっ(゚∀゚)!
私も実はずっと買えるかどうかわからない1つの物件に集中するよりも、第2候補にも同時買い付けを入れたいと思っていたが、
本当にやる人がここにいた♪( ´θ`)ノ。
まー、考えたら日本でもローン条項とか入れてローンがだめになったら買い付けは取り下げる。本気で家を買いたければ、なるべくたくさんの物件を内見して、候補を複数ピックアップし、第1候補がダメになったらすぐに第2、第3候補の物件にシフトできるように準備しておく事は合理的なのではと思った。
「ロケーション・ロケーション・ロケーション」
「ロケーション・ロケーション・ロケーション」
英国では誰もが、不動産はロケーションがもっともたいせつだと口を揃えて言う。それは、貧富の格差が激しい英国では、貧民層が住むエリアは安いが、まともな人は買ったり借りたりしないという意味でもあるようだ。
夫やその家族に「この物件はどう?」と提案しても、立地がお話にならない、という理由で全く相手にされないことが多かった。
夫にだめな理由を聞いたときに、「僕が昔知っていた地域で、当時は問題なく良い人が住んでいたのに今は荒廃してしまったらしい」って言われた。
「その荒廃って、具体的に今どうなったの?もう少し説明してくれない?」
夫はなぜか言いたくなかった秘密でも打ち明けるように、しばらく口をモゴモゴとさせてから口を開いた。
「ドラッグ・ディーラーなど反社会的な人が隣人になっちゃうエリアってことだよ」
「!!!?? d( ̄  ̄)」
突撃タイプの井形さんも、この物件はと思うものを不動産会社に伝えると、ぼろくそに言われることが続いてどう立地を選ぶのがいいのか?でかなり気弱になっていた。
イギリス人の友達に「英国で物件の立地をABCDEと5段階に分けた場合どの家を買うべきでないか」と聞いたら、「下から2番目と1番目はやめたほうがいい」と言われた。
夫の指摘と合わせて考えて初めて、上記の友達の「下から1、2番目は避ける」、と言う意味がわかった。
下から1番目はドラッグ・ディーラーなど反社会的な隣人になる可能性、
2番目は今はそうでなくても将来そう言う人たちのエリアになる可能性が高い、ってこと。
たぶんそのためにイギリスでは立地の選び方が、日本と比較にならないくらい厳格で複雑だ。
イギリスで「治安が悪い場所」は日本のそれとは意味が違う
日本で「治安が悪い場所」と言えば繁華街で、客引きするようなお店が夜遅くまで営業しているようなところをイメージするだろうか。でもイギリスでは、パブが多いところはもちろん住宅地として理想ではないけれど、一般的に「治安が悪い」とされるのは貧困層が住むエリアのようだ。
友達の友達(イギリス在住)は貧困層の住むエリアでマイホームを格安で買ったものの、1年以内に買った家を放置し逃げ出したそうだ。理由は絶えず窃盗や放火などの被害があったからで、そういうエリアでは、家の保険すら保険会社から拒否されつけられないらしい。
「なぜ貧困層の住むエリアで、お金がないとわかっている家に押し入って盗みを働くのか?」お金持ちの家に侵入するほうが実入りがいいのに、と思い上記の文で検索をしたら、ロンドン大学のサイトで一つの論考が掲載されていた。それによれば泥棒を働くような人が、お金持ちが住むところに行くと浮いてしまう。でも貧民層の地域では目立たず、実入りよりもつかまりにくい場所で仕事するという選択肢で、貧困エリアに犯罪者が多くなるとのことだった。
(井形さんの本では不動産会社が、「多人種のエリア=治安、立地が悪い」という文脈で語っていたが、同時に高級住宅地はロシアなど?の外国人が投資で買ったり住んでいたりする。つまり人種による格差もあるけれど、エリアによってはイギリス人より外国人の方が富裕ということもある。ロンドンにはイギリス人より金持ちの外国人も、その逆の外国人も、ひしめいている。)
アングロサクソンとケルト、そして移民。いつの時代も格差と差別は存在した
たとえば夫の祖先にはアングロサクソンもアイルランド(ケルト)系も混ざっている。が、アイルランド系が多いらしい。日本人には「あ、そう」♪( ´θ`)ノくらいの事柄だが、夫の姉によるとアイルランド系は就職に不利など、最近まで差別がなお残っていた、と言う。だって、
何世紀か前は、アイルランド系=移民だったのだ!
北アイルランドに旅した時、プロテスタントかカトリックかで流血のテロが繰り返され、今は平和だが人々の心にその傷は残っていると現地の人の話を聞いて思った。
イギリスはプロテスタントの国で、信者数で言えばカトリックが多いアイルランド系はマイノリティーなのだ。夫は「アイルランドの争いは宗教ではなく、カトリックだと就職に不利など人権の問題なのだ」と言っていた。
しかし祖先の出自がハッキリしていたのはもう何百年も過去のこと。もとの出自を超え、個々の人の経済力、異性への情熱などで社会も人種も長ーい年月の間に混ざりに混ざって、「純粋にイングランド(またはアイルランド、ウェールズ、スコットランド)人」なんていうイギリス人は存在しない。だから歴史を遡り、移民の時期が古ければ古いほど出自による格差は、人権意識が日本よりははるかに定着する現在のイギリスでは、ひっそりとフェードアウトしつつある(逆に言えば新しいほうの移民については格差が歴然とある) のかもしれない。
移民が住むエリアは貧困で犯罪多発地域?
ロンドン中心部にある広大な公園ハイドパークのそばに昔から日本の団地(公団住宅)にそっくりな4階建て程度のそっけなく味気ないコンクリートの共同住宅があり、周囲は瀟洒なビクトリア時代の住宅が多い中で目立っている。
どこの国にもこのような行政の資金で建てられた、機能本位のアパートがあるけれど、イギリスでは「カウンシルハウス」(カウンシルはこの場合地方行政を指す)と呼ばれ、建てられた当時は庶民の賃貸用だったが、今は多くが売買されている。(参考記事:「イギリスの家はいつ建てられたの」)
ロンドンのハムステッドという高級住宅地では格安価格で売りに出されていたカウンシルハウスに一目ぼれした井形さんは、日本のお金持ちが主要顧客である不動産会社社長から「カウンシルハウスの住人=移民=犯罪者」のようなことを何度も言われる。
私と夫が今まで日本で買った賃貸用の物件も、イギリスのカウンシルハウスに相当する古い団地などで、比較的富裕層が住むエリアか、そういうエリアから徒歩数分の立地が多い。築30年以上だと日本では大体、資産価値がゼロなので格安で購入できるから資産価値よりも立地と賃貸収入を重視してそのような物件ばかりを買ってきた。10年ちょっと賃貸する間には空室期間を最小限にするようかなり努力もしたおかげで、購入金額は賃貸収入でほぼ回収し終えている。つまりこれから全物件を売ったとしても、利益にしかならず損することはないってこと。
ただ、日本の貧困の格差構造は今はまだイギリスとは少々乖離がある。だから日本でそのような物件を買ったからといってイギリスでも買うかと言うと、さらに細かいエリアや住んでいる人たちの暮らしなどを見極めて、慎重に買わなければならないと思う。
まとめ
日本とイギリス、マイホーム購入でもっとも大事な点はたぶん変わらない。違う点も、イギリスの方が貧富の差が根付いていると言うのが背景なのだけれども、日本も最近はイギリスと似た格差社会になってきている。
日本でもどこでも、資産価値の安全性を考えたらロケーションがもっともたいせつなのは変わらない。不動産投資のライターの仕事で多くの不動産投資家に取材もしてきた私も、このことは確信を持って言える。
評価(物件価格)が安定したロケーションに買えば、マイホームでも投資用でも、物件を売らなければならない時、買ったのと同じ価格で売れて経済的には損しない、いわばリスクフリーになれる。日本ではなかなかそういうロケーションは限られるだろうけど運が良ければむしろ利益が出せて得をする。
とは言え、立地が悪いからダメ、〇〇だからダメと決めつけることも私はしたくない。なぜなら特にマイホームなら自分が気に入って幸せに何十年も暮らせれば、売った時に損しないとか得するかなんてどうでもよくないか?それに投資なら田舎の過疎地でも、100万円台で買って数万円で貸せれば、数年で元がとれそれも良いと私は思う。どの国、地域でも特殊性があり、特殊性を調査して何を目的にその不動産を購入するのかを見極めた上で、資産価値を重視するのか、その後のローンの支払い等での経済的なハードルを低くしたいかなど、目的や計画に合った購入をしたい。
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